MS法人設立のメリット・デメリットをわかりやすく解説!
経営面や税金面の対策として、MS法人の設立を検討する医師や歯科医師の方は多く見られます。MS法人化は、個人クリニックはもちろん、すでに医療法人として経営している場合でも設立できます。
MS法人には、メリットだけでなくデメリットもあるため、設立を検討する場合はMS法人化の概要や設立後のイメージを掴んでおきましょう。
そこで今回は、MS法人の概要と活用方法、メリット・デメリットについて解説します。MS法人化に興味がある医師や歯科医師の方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.MS法人(メディカルサービス法人)とは?
- 1.1.MS法人の活用方法|よくある業態
- 2.医師・歯科医師がMS法人を設立するメリット3選
- 2.1.医療法人では行えない事業を展開できる
- 2.2.節税効果が期待できる
- 2.3.クリニックとMS法人を分離できる
- 3.医師・歯科医師がMS法人を設立するデメリット3選
- 3.1.事務処理に費用と手間がかかる
- 3.2.税理士への報酬がかかる
- 3.3.株価の贈与税・相続税が高額となる可能性がある
- 4.まとめ
MS法人(メディカルサービス法人)とは?
MS法人とは、「Medical Service(メディカルサービス法人)」の略称です。「法人」と付いていますが、法人格があるわけではありません。
医療法人には非営利性が求められるため、行えない業務が存在します。一方、MS法人は単独で医療行為はできないものの、医療系サービスの事業を行うことが可能です。MS法人設立により、診療と経営を切り離した運営ができるようになります。
医療法人設立には、都道府県の管轄部署への相談、法務局や保健所への申請などが必要であるのに対し、MS法人は株式会社と形式が同じであるため簡単に設立できます。
MS法人の活用方法|よくある業態
MS法人の活用方法としてよくある業態は、下記の通りです。
●医療・経理事務の請負
MS法人の活用により、保険請求業務・会計業務・歯科技工業務の請負契約が可能となります。複数の医療機関を運営している場合は、経理の一括管理がしやすくなります。
●医薬品・医療機器・医療資材の販売
医薬品や医療機器の購入と管理は、クリニック運営に欠かせない業務の1つです。MS法人を活用することで、仕入管理業務がスムーズになります。
●不動産の賃貸事業
MS法人では、賃貸目的での不動産購入や保有ができます。保有する不動産や賃借したテナントを、クリニックや調剤薬局に貸し付けることも検討してみましょう。
●訪問介護事業
MS法人は、介護事業だけでなく家事代行や外出支援などのサービスをトータルで提供できます。医療法人の場合は、家事代行サービスや外出支援に関する事業を行うことができません。
医師・歯科医師がMS法人を設立するメリット3選
MS法人の設立により、医業に関係する業務の管理や効率を上げることができます。さらに、保有する不動産の貸し付けにより資産運用も可能です。
医師・歯科医師にとって、MS法人設立にはキャリア形成や資産形成の面でメリットがあると言えます。
ここでは、医師・歯科医師がMS法人を設立するメリットを3つ解説します。
医療法人では行えない事業を展開できる
医療法人では行えない事業を始められることは、MS法人を設立するメリットの1つです。別事業に対して医療法の規制が適用されないため、事業展開の幅を広げられます。
別事業の主な例は、下記の通りです。
● 化粧品販売 ● 健康食品の製造や販売 ● 福祉サービスの運営 |
クリニックや病院を受診する患者さんをターゲットにした事業はもちろん、地域に住んでいる方のニーズに応える事業など、さまざまな事業展開が考えられます。
クリニックや病院で働くスタッフが働きやすいように、保育施設を開設して運営することも可能です。
ただし、MS法人で化粧品や健康食品が関係する事業を行う場合は、薬事法・薬機法・医療法に該当しない行為かどうか十分確認しましょう。
節税効果が期待できる
MS法人を活用すると、経費や売上をコントロールして節税効果を得られます。MS法人の活用による主な節税効果は、下記の通りです。
●経費枠の増加
不動産の賃貸や医療・経理事務の請負で発生した家賃や業務委託料などは、経費として計上できます。さらに、出資金が1億円以下の医療法人の場合は、交際費損金算入限度額が増加することが特徴です。
●法人税の適用
医療法人や個人の所得税率は、所得が増えるほど税率が高くなります。一方、MS法人の場合は、年間800万円までの所得に対して法人税軽減税率が適用されます。
●所得の分散
家族をMS法人の役員にすると、役員報酬を支払って所得の分散ができることもメリットです。役員である家族の退職時には、退職金を支払うこともできます。
クリニックとMS法人を分離できる
MS法人設立により、医療行為と医療行為を含まない業務を分離できます。2つを明確に分ける主なメリットは、次の通りです。
● お金の流れを把握しやすくなる ● 業務負担を軽減できる ● 診療業務に専念できる ● 労働環境を分けられる |
クリニックとMS法人を分けることで、それぞれの経営スタイルがシンプルになります。
医師やスタッフの負担が軽減され、業務内容に適した就業規則を設けやすくなることは大きなメリットです。
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医師・歯科医師がMS法人を設立するデメリット3選
MS法人にはさまざまなメリットがある一方で、設立におけるデメリットもいくつかあります。MS法人設立によるメリットを高めるためにも、考えられるデメリットを理解して対策を講じておきましょう。
ここからは、医師・歯科医師がMS法人を設立するデメリットを3つ紹介します。
事務処理に費用と手間がかかる
MS法人の設立と事務処理には、費用と手間がかかります。MS法人の設立にかかる主な費用は、下記の通りです。
● 登記費用 |
MS法人はクリニックや病院とは別に運営する必要があり、業務や事務処理が煩雑になりやすいと言えます。
しかし、クリニックや病院とMS法人間の取引が適正ではないと税務署に判断されると税務否認となるため、税務状況はしっかりと把握しなければなりません。
医師やスタッフの負担を軽減し、クリーンな経営を続けるためにも、管理責任者の配置や事務局の整備にも力を入れましょう。
税理士への報酬がかかる
MS法人を設立するとなれば、クリニックや病院とは別に帳簿や納税申告書などを作成することになります。
医療法人と営利法人では申告の勝手や節税の課題も異なるため、報酬が上乗せされることが一般的です。
MS法人設立に伴い、税理士へ支払う報酬が高くなることを覚悟しておきましょう。
税理士の報酬は、個人か医療法人かによって相場が異なります。年商や訪問回数によっても報酬額に差があるため、MS法人化を検討している場合は、税理士に相談してみましょう。
株価の贈与税・相続税が高額となる可能性がある
MS法人は、株式会社や合同会社と同じ扱いであるため、自社株式や持分が発生します。
株式や持分は、保有者の資産とみなされ贈与や相続の対象となることが特徴です。
MS法人の業績がよく規模が大きくなること自体は喜ばしいことですが、次の世代に引き継ぐ場合は贈与税や相続税が発生します。
評価額次第では、贈与税や相続税が高額となる可能性があるため注意が必要です。
贈与税や相続税が高くなると予想される場合は、生前贈与をするなど対策を講じておきましょう。
MS法人の設立は、事業継承や廃業まで考えた上で検討することが大切です。
MS法人設立のメリットを高めるためにも、知識と経験が豊富な専門家に相談しながら設立を目指しましょう。
まとめ
MS法人は、医療行為を含まない医療系サービスを行える事業法人です。MS法人の設立により、診療と経営を切り離した運営が実現できます。
MS法人設立のメリットは、「さまざまな事業展開ができる」「節税効果が期待できる」などです。一方で、事務処理に手間と費用がかかることや株式の贈与税・相続税が高額になる可能性があるなどのデメリットもあります。
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