医療法人の設立による節税効果は?さらなる税金対策の方法も紹介!
医院の経営を安定させるには、収益効率を高めると同時に節税対策も行うことが重要となります。医院の節税対策として効果的な方法が「医療法人の設立」です。
医院を開業・経営する医師であっても、医療法人について詳しく知らない方は多いでしょう。医療法人を設立するメリットも把握すれば、節税対策となることが理解できます。
そこで今回は、医療法人の設立によって受けられる主な節税効果と、節税効果をさらに高める税金対策を解説します。
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目次
1. そもそも「医療法人」とは?
1-1. 医療法人と個人病院・クリニックの違い
1-2. 医療法人の2つの種類
2. 医療法人化による主な節税メリット6つ
2-1. 所得税から法人税へ変わる
2-2. 所得の分散が可能となる
2-3. 給与所得控除が適用される
2-4. 退職金を出せる
2-5. 生命保険料を経費として計上できる
2-6. 出張旅費日当を活用できる
3. 医療法人がさらなる節税効果を生み出すには
まとめ
1.そもそも「医療法人」とは?
医療法人とは、医療施設の開設を目的として設立される法人のことです。
医療の提供体制を定めた法律である「医療法」では、医療法人について下記の通りに定義しています。
第三十九条 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。 |
(引用:e-Gov法令検索「医療法」/https://elaws.e-gov.go.jp/documentlawid=323AC0000000205)
医療法人は、病院などの医療機関や介護施設を開設・運営します。医療施設の運営を通じて医療の提供体制を確保し、国民の健康保持に寄与することが医療法人の目的です。
1-1. 医療法人と個人病院・クリニックの違い
医療を提供する施設には個人病院やクリニックもあります。医療法人と個人病院・クリニックの最も大きな違いは、「営利目的の活動ができるかどうか」という点です。
個人病院・クリニックは営利目的の活動ができます。経営者は医師個人であり、経営によって得られた収入は自由に使うことが可能です。
対して、医療法人は営利目的の活動ができず、運営には非営利性が求められます。経営によって得られた収入は医療法人に帰属し、経営者が自由に使うことはできません。
一般的な法人であれば当たり前に行われる余剰金の配当も、医療法人では禁止されています。
1-2. 医療法人の2つの種類
医療法人は大きく分けて「社団医療法人」と「財団医療法人」の2種類が存在します。
社団医療法人とは、医療施設の開設を目的として出資が行われ、設立される法人のことです。社団医療法人を設立するには、金銭や医療機器などの出資もしくは拠出と、2か月以上の運転資金が必要となります。
一方の財団医療法人とは、寄附によって集められた資金や財産にもとづき、設立される法人のことです。法人の設立が寄附によって行われる点以外は、社団医療法人との大きな違いはありません。
2. 医療法人化による主な節税メリット6つ
医療法人化をすることで得られる節税メリットは、主に6つあります。医院を経営している方は節税メリットをしっかりと把握した上で、医療法人化をするかどうかを検討しましょう。
6つの節税メリットについて、具体的にどのような点がメリットになるかを詳しく解説します。
2-1. 所得税から法人税へ変わる
医療法人化をすると、所得にかかる税金が所得税から法人税へ変わります。
個人経営の病院やクリニックの所得に適用される所得税は累進税率となっていて、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる点が特徴です。所得税の税率は最大45%まで上昇します。
対して、医療法人の所得に適用されるのは法人税です。法人税は比例税率であり、年800万円以下の部分は15%、年800万円を超過する部分は23.2%で計算する仕組みとなっています。所得がどれだけ高くなっても、計算方法が一定である点が法人税の特徴です。
年間の所得が高くなりやすい医院やクリニックは、所得税よりも法人税の適用を受けたほうが節税できます。
2-2. 所得の分散が可能となる
医療法人化をした病院で得られる利益は法人の所得となり、法人の所得から給与の支払いが行われます。「法人」の所得と、「理事長」や家族の「理事」などに支払う給与分の個人所得に分配することで、所得の分散が可能となる点がメリットです。
個人所得には所得税が適用されるため、理事長1人だけで高額な給与を受け取ると所得税も高額になります。しかし、家族を理事にして給与を支払えば給与所得を分散でき、所得税の累進課税によるデメリットを軽減可能です。
医療法人の理事は責任の大きい立場であり、理事となった家族への給与額はある程度高額であっても認められやすくなっています。
2-3. 給与所得控除が適用される
個人経営の病院やクリニックの院長は、所得の区分が「事業所得」となっています。
対して、医療法人化をすると院長は理事長となり、所得の区分が「給与所得」となるため。給与所得控除が適用される点がメリットです。
給与所得控除とは、給与所得を得ている人の税額計算をする際に、給与の収入金額から差し引ける控除のことです。給与所得控除は最低55万円、上限額が195万円となっていて、所得税の節税につながります。
理事長や理事の給与を決める際には、給与所得控除を適用した場合に所得税の税率が抑えられるラインを考えることがおすすめです。
2-4. 退職金を出せる
医療法人化をした病院では、退職者が出た場合に法人から退職金を出せる点もメリットです。医療法人は、退職者の経験年数に応じた金額を退職金として出し、さらに退職金の全額を退職日が属する事業年度の損金として経費計上できます。
退職金は所得税の計算方法が優遇されていて、受け取る退職者にとってもメリットが大きい制度です。
退職金の所得税計算では、まず退職金の金額から退職所得控除を差し引き、さらに控除後の金額を1/2にした額面に対して課税されます。同じ金額を受け取る場合でも、給与所得より退職所得として受け取ったほうが節税になります。
2-5. 生命保険料を経費として計上できる
病院やクリニックを経営する方は、万が一の事態に備えて保障が充実した生命保険に加入していることが多いでしょう。医療法人には、生命保険料を法人の経費として計上できるメリットがあります。
個人の場合にも生命保険料控除はあるものの、控除額は上限12万円までとなっています。
一方、医療法人で経費として計上できる金額は生命保険料の全額です。高額な生命保険料を支払っている場合も、全額を医療法人の経費として計上すれば節税が可能です。
また法人保険の中には、経営者・役員の退職金に使える生命保険がたくさんあります。生命保険料を経費として計上しながら積み立て、退職金として使用することで、大きな節税効果が得られるでしょう。
2-6. 出張旅費日当を活用できる
医療法人化をすると、理事長が学会出席などのために出張をした場合に「出張旅費日当」を支給できます。
出張旅費日当とは、宿泊費・交通費などの実費精算する費用とは別に、出張中に発生する費用を補填するために支給される手当です。たとえば出張中の食事やサービスの利用料として、出張旅費日当を活用できます。
出張旅費日当は給与として扱われず、支給された個人は非課税でお金を受け取れる点がメリットです。
日当を支給した法人側も全額を損金として経費計上できるため、節税効果が得られます。
3. 医療法人がさらなる節税効果を生み出すには
医療法人がさらなる節税効果を生み出すには、下記の2つの方法があります。
●MS法人の活用
MS法人とは、医療法人でなくてもできる業務の請負を事業とする会社のことです。
医療法人とは別にMS法人も設立すると、医療法人とMS法人で所得の分散ができ、節税につながります。
●確定拠出年金・確定給付企業年金の活用
確定拠出年金や確定給付企業年金は、拠出された掛金を運用し、原則として60歳以降になったときに給付が行われる年金制度です。
企業型の年金制度は掛金の全額を損金計上できるため、節税効果があります。
まとめ
個人経営の医院を医療法人化すると、経営の主体が法人となり、さまざまな節税効果が得られます。
医療法人化による大きな節税メリットは、所得税から法人税へ変わる点と、所得の分散が可能となる点です。各種控除の活用もできるようになり、個人経営の医院よりも効率的な節税が行えます。
医療法人化をする際は、MS法人や確定拠出年金・確定給付企業年金の活用も検討しましょう。節税効果を高めることで、安定した医院経営を実現しやすくなります
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