【個人開業医向け】基本の節税方法とおすすめの節税テクニック5選
個人開業医として医院を経営する上で、覚えておきたい取り組みの1つが「節税」です。収入が大きくなるほど、支払うべき税金額も高くなるため、これから自院を成長させようと考えているのであれば、早いうちに節税方法を把握する必要があります。
そこで当記事では、個人開業医が実践すべき基本的な節税方法を紹介します。節税につながるテクニックも解説するため、早いうちに節税を実践しようと考えている個人開業医は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.個人開業医に節税が重要となる理由は?
- 2.個人開業医の基本的な節税方法は「経費計上」
- 3.個人開業医におすすめの節税テクニック5つ
- 3.1.(1)公的制度を活用する
- 3.2.(2)所得分散の見直しを行う
- 3.3.(3)償却資産を活用する
- 3.4.(4)特別支出控除を受ける
- 3.5.(5)医療法人化をする
- 4.開業医が節税を考える際におさえておきたい優先順位
- 4.1.(1)患者さんのための設備投資
- 4.2.(2)スタッフのための福利厚生
- 4.3.(3)自分のための投資
- 5.まとめ
個人開業医に節税が重要となる理由は?
個人開業医が支払わなければならない税金には、下記の通り複数の種類が挙げられます。
● 所得税 ● 事業税 |
中でも特に所得税は、上記の税金の中でも金額が大きく、収入に比例して税額が高くなる「累進課税制度」をとっているため注意が必要です。「売上が増えた」と安心して支出を増やすと、その分所得税が高くなり支払いが困難になる可能性もあります。
特に開業したての個人開業医は、経営の先行きを見通すことができず、適切な節税方法がわからない人も多いでしょう。例えば、「確定申告のタイミングで所得税を算出したら、当初想定した額を大幅に上回る所得税を納める必要があった」というケースも珍しくありません。
また、医院の減価償却が減ってくる開業5・6年目以降に、税金が大幅に増えるタイミングが訪れることもあります。将来的に高い税金に悩ませられないためには、今のうちから正しい知識を身に付け、節税に努めることが大切です。
個人開業医の基本的な節税方法は「経費計上」
納付しなければならない税金は、「収入-経費」で算出できる「所得金額」に対して税率が掛けられて決まります。
つまり、税金を抑えるためにできる対策は、「収入を減らす」「経費を増やす」の2通りです。ただし、収入を減らすと生活そのものが苦しくなる上に、事業も進展しないため、現実的なのは「経費を増やすこと」と言えます。
個人開業医が経費として計上できる費用項目は、下記が代表例です。
●設備関係費
日々使用する医療機器や事務処理のためのパソコン、車両、医院のリフォームなど、業務に関連して使用する設備は経費として計上できます。数年にあたって使用する設備に関しては、減価償却費としての計上が可能です。
ただし、「節税目的で焦って医療機器を入れたがあまり使っていない」のように、経費を増やすために不必要な設備投資をする例もあります。余計な支出は結局損になってしまうため、設備投資計画を立てることがおすすめです。
●福利厚生費
福利厚生としてスタッフを慰労する目的で社員旅行を開催したり、健康維持のためにフィットネスクラブの利用料金を助成したりする場合などが該当します。福利厚生には、自社への満足度向上による離職率の低下や、モチベーションアップなども期待できるため、効果的に活用してください。
●交際費
接待時の飲食費や祝い金など、事業にかかる接待や贈答において発生する費用は、交際費として計上可能です。事業と関係ない食事やプライベートでの祝い金などは対象とならないため、注意してください。
●会議費
医院外で会議を開催する場合に、カフェやレンタルルームなどを利用すれば、会議費として経費に計上できます。場所代だけでなく、会議に伴って発生した飲料費や弁当代なども対象です。
なお、パソコンをプライベートと併用している場合など、用途が事業のみでない場合は一部のみ経費として認められる場合があります。また、カフェでリラックスをしただけなど、個人的な目的での支出は経費と認められない可能性が高いため、注意が必要です。
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個人開業医におすすめの節税テクニック5つ
経費計上は、当然ながら実際に使用した分しか計上できないため、節税方法としては限界もあり、それだけでは十分な節税効果が見込めません。そこでおすすめなのが、経費計上以外にも、他のテクニックを併用することです。
ここでは、個人開業医におすすめの節税テクニックを5つ紹介します。
(1)公的制度を活用する
最もリスクを抑えて実施できるテクニックが、公的制度の活用です。公的制度の中には、掛金が「所得控除」の対象となる制度があるため節税につながります。節税におすすめの公的制度としては、下記が一例です。
● 確定拠出年金 ● 小規模企業共済 |
公的制度の活用は、誰でもすぐに実践できる節税テクニックであるため、なるべく早く取り組むことをおすすめします。
ただし、公的制度の掛金が高すぎるとかえって生活が圧迫されてしまう状況になりかねないため、払える範囲で掛け金を設定してください。
(2)所得分散の見直しを行う
家族に自院を手伝ってもらっている場合、所得分散の見直しを行うことも節税テクニックの1つです。同じ所得金額であっても、全額1人分の所得とするのではなく、複数人に分散させたほうが合計の所得額が少なくなります。
極端な例ですが、900万円の所得金額があった場合、1人分の所得金額にした場合と3人で300万円ずつ分散した場合の所得税額は下記の通りです。
▼【例】900万円を1人分の所得金額とした場合の所得税額
900万円×33%-153万6千円=143万4千円=所得税額 |
▼【例】900万円を3人で300万円ずつ分散した場合の所得税額
900万円÷3人=300万円 300万円×10%-9万7千5百円=20万2千5百円 20万2千5百円×3人=60万7千5百円=3人の総所得税額 |
上記の例では、所得金額を分散しなかった場合と分散した場合で、分散したほうが所得税額の合計が大幅に低くなることがわかります。
家族に医院を手伝ってもらっている場合、適正な給与であるか都度見直しをすることがおすすめです。
(3)償却資産を活用する
減価償却の対象となる資産を活用して、減価償却費を計上して節税を図ることも可能です。減価償却費とは、固定資産の導入にあたって、耐用年数に応じて一定期間に分配して費用計上する処理方法を指します。例えば100万円の医療設備を導入する場合、定められた耐用年数に応じて毎年数万円を経費計上します。
償却資産を活用して節税を図る場合は、所得が多くなるタイミングで計上することが重要です。そのため、事前に設備投資計画を立てた上で、長期的な視点で資産を購入するようにしてください。
(4)特別支出控除を受ける
特別支出控除を受ける方法も、個人開業医が実践できる節税テクニックの代表と言えます。特別支出控除とは、国に定められた特定項目の支出合計額が、一定の基準を超えた場合に、超えた分の金額を所得金額から差し引ける制度です。
特別支出控除には、下記の8つが該当します。
● 通勤費 ● 転任に伴う転居費 ● 研修費 ● 資格取得費 ● 単身赴任の場合などに発生する帰宅旅費 ● 図書費 ● 衣服費 ● 交際費 |
特別支出控除を受ける際は、確定申告時に、支出に関する明細や金額を証明する書類を添付しなければなりません。支出が発生した段階でしっかり管理しておきましょう。
(5)医療法人化をする
税金を大幅に減らす方法として挙げられるのが、医療法人化です。所得税の場合、仮に収入が1,800万円を超えている場合は40%の税率が、4,000万円以上であれば45%の税率が適用されます。
医療法人化すれば、所得税ではなく法人税の支払い義務が発生し、税率は年800万円以下であれば15%、年800万円以上であれば23.2%です。収入が大きい開業医ほど、医療法人化による節税は効果的だと言えます。
ただし、個人開業医として税金を納める際よりも手続きが複雑になるため、メリット・デメリットの両方を踏まえて検討すると良いでしょう。
開業医が節税を考える際におさえておきたい優先順位
きちんと節税に取り組めていない方のライフプラン表を作成すると、税金が日々の生活を圧迫し、キャッシュフロー不足に陥ってしまっている場合が多くあります。
所得額は、大雑把に言えば収入金額から必要経費を差し引いた(控除した)金額によって決まります。つまり、この経費をどのように出すかによって、納税額は大きく変わってきます。
この必要経費の中身は、大きく分けて「(1)患者さんのための設備投資」「(2)スタッフのための福利厚生」「(3)自分のための投資」の3種類に分けることができます。
(1)患者さんのための設備投資
最新の医療機器、レントゲン撮影機材をはじめとして、各種の治療用器具や事務処理のためのパソコン、医院のリフォームなどがこれに該当します。
「毎年年末にパソコンや事務機器など30万円以下の少額設備をいくつも購入している」「節税目的で焦って医療機器を入れたがあまり使っていない」といったケースもよくありますが、不必要な設備投資は無駄になってしまいます。
医療技術向上のため、そして患者さんのために、専門家である税理士や公認会計士のアドバイスをもとに現在の優遇税制も活用して、効果的な設備投資計画を立てましょう。
(2)スタッフのための福利厚生
医院で働く看護師や歯科衛生士、事務員などスタッフへの福利厚生のための経費です。
具体的には、今年は大きく利益が出そうだと予想できる時には、特別賞与を出す・給与を上げる・あるいは社員旅行や研修旅行を行うなど、福利厚生費として必要経費を使う方法が挙げられます。
人材不足の昨今、福利厚生を充実させることで優れた人材が集まることも多く、離職率を低下させることが大切です。スタッフ確保のためだけでなく、従業員のモチベーションを向上させるためにも効果的に活用しましょう。
(3)自分のための投資
自分のための投資として代表的なものは、生命保険を活用した退職金の積立です。
医療法人であることが条件にはなりますが、その年に出た利益の一部を生命保険などに投資をしておけば、支払った保険料の一部を損金算入し、節税することができます。
また、自身の退職金だけではなく、役員をされているご家族の退職金として積み立てることも可能です。
活用できる環境にある方は、必ず活用していただきたい手法です。それでもまだ利益が出るということであれば、新たに期が始まって3ヶ月以内に、理事長や理事の役員報酬の見直しを行い、利益が残り過ぎない役員報酬に改定することをおすすめします。
将来の退職金確保と、現在の収入アップをライフプラン上でバランス良く調整することで、個人事業にはない医療法人のメリットの最大化を図ることができます。
医療法人を上手に活用することで、個人と法人での2軸での資産形成が可能になります。
中には、医療法人で退職金の積立を全くされていない方も稀にいます。
当社に問い合わせくださった医師・歯科医師の中でも、3期連続2,000万円以上の利益が確定しているにも関わらず、何の対策も講じず顧問税理士からのアドバイスも皆無だった方や、役員報酬が非常に高く設定されていて、個人の頃と変わらぬ所得税を納められている方など、医療法人のメリットを全く活かせていないと感じる決算書を拝見したことも実際に何度かありました。
本当に必要なものなのかどうかを選択する際の優先順位としては、(1)患者さんのための設備投資→(2)スタッフのための福利厚生→(3)自分のための投資 の順番が最も理想的です。
まとめ
日本では、収入が上がるほど税金が高くなる「累進課税制度」がとられており、計画的な節税が求められます。
税金を抑える方法は「収入を減らす」「経費を増やす」の2通りあり、特に効果的な方法は「経費を増やす」です。計上できる経費・できない経費を整理した上で、日々の支出を見直しながら節税すると良いでしょう。
また、経費を増やすにも限界があるため、「公的制度の活用」「所得分散の見直し」などのテクニックを実践することもおすすめです。
ぜひ、すぐに取り組める節税方法から実践してみてください。
~税金を払いすぎていないか確認しましょう~
国の制度は頻繁に変わり、一度対策を打てば永続的にその効果を得られるものではありません。
年に一度は、1年分の納税予測を立て、何か打てる策はないか検討することは非常に大切です。
節税は納税者の権利ですので、税金を払い過ぎている場合は、それを医院のため、ご家族のために使えるように対策を始めませんか。
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