「資産状況」を知りファイナンシャルゴールを決める
資産状況からファイナンシャルゴールを決める
収支と支出のキャッシュフローを算出し、次に把握しておきたいのが現時点での「資産状況」です。そもそも自分自身の資産総額を正確に知っておくことは大切なことで、現時点の資産状況を見てファイナンシャルゴールの時期を決めています。
自身がどのステージなのかにもよりますが、たとえば開業準備中や開業してまだ5年未満といったような人は、資産に余裕があるというわけではありません。
さらに、将来的に子供が医師になりたいということになれば、ひとりにつき数千万円単位の教育費が必要になってきます。
つまり、リタイア後の資産形成の前に、多額の教育資金を作らなければならない可能性があるのです。また、私のクライアントで実際にあった話ですが、看護師だったひとり娘から医学部に合格したと突然の報告があったり、薬学部だった長男が歯学部へ編入したりと、親としては後継者ができて嬉しい反面、資金的な負担が……、といった開業医特有の事情が出てきたこともあります。
本来、高額所得者でキャッシュリッチな開業医の場合、多額の預貯金があるケースもよくあります。「年間収支」が長期にわたってプラスになっている人であれば、ある程度の資産は自然に蓄積されていくものと考えていいでしょう。
しかし、これは支出や収入の項目でも言えることですが、正確な数字で試算しないと、正確なシミュレーションはできません。
ある開業医の「悩み」
たとえば、ある開業医が「蓄えが少ない」という悩みで相談に来られたことがあります。すでに60代に手が届くという年齢で、医院経営はうまくいっているように見えました。
にも関わらず、ほとんど預貯金がなく、キャッシュフローに悩んでいらっしゃったのです。そこで決算書などを調べさせていただきましたが、どうも数字が合いません。
「これだけの収入があれば、もっと資産が残っているはずですが、余計な支出をしていませんか?」とお聞きすると、最初は何もないと否定していたものの、最後には渋々、すでに社会人になっている28歳の子供に多額の仕送りをしていたことを話されました。
これでは、蓄えができないのも当然です。ご自身の収入をどう使うかは本人の自由ですが、正しく人生計画をするのであれば、できる限り正確な数字が必要であることは言うまでもありません。
隠し財産や隠れ支出といったものがあったのでは、数字が合いませんし、将来の予測にも影響が出てきてしまいます。
現在の資産総額を正確に把握するには、たとえば資産状況を書き出せるシートを使って、把握するのもひとつの方法です。
このシートは、コンサルタントなどが顧客に様々な聞き取りを行ないますが、その聞き取り内容を精査してマニュアル化したものと考えればいいでしょう。このシートを使えば「資金総額」から「今後必要な資金」を差し引くことで、「現在の資産状況」が分かるというわけです。
現在保有している預金や投資信託などの資産総額から、現時点で残っている住宅ローンや事業借入など、マイナス部分を差し引いたものが、現在の「純資産」になります。
あくまで一般的な統計でありますが、開業医の「開業後年数別平均手取り年収金額」は開業後11~15年の1879万円をピークにして、その後徐々に減少していく傾向があります。開業後6年から20年の間が最もピークになりますので、この間にきちんと資産形成をしておく必要があります。