医師の休業保障
こんにちは。 資産形成コンサルタントの山田です。 今回は「開業医の休業保障」をテーマにお話をしたいと思います。
開業医に休業保障の正しい備え方とは?
読者の皆さんの中で、開業時に自身が働けなくなった場合のリスクについて今まで検討したり、 実際に休業保障保険などの提案を受けたり、すでに加入されている方も多いのではないでしょうか? 特に医院の経営者としての責任や一般的に高所得者である場合の多い医師、開業医の方が 勤労収入を失う経済的なリスクは大きく、休業中の生活費、治療費(リハビリテーションも含む)、や医院の維持費、家族の負担などが大きくなることが予想できるため、死亡リスクより働けなくなるリスクの方が高くなる傾向にあります。 私どものアンケート調査でも、働けなくなった場合のリスクが心配か?の問いにたいして 実に87%の開業医の方が「心配」と答えているように、開業医の方も体感的に休業保障の必要性を感じていらっしゃることが分かります。 読者の皆さんは 休業保障 の準備は必要だと思いますか? 実際どれくらいの保障を、いくらぐらいの予算で備えていますか? 本コラムでは、開業医方の関心事のひとつである、休業保障の備え方について一緒に考えていきたいと思います。 コンサルティングの現場で、開業医のクライアント様から相談を受けた場合、 休業保障は絶対に必要ですが、まずは必要保障額をちゃんと算出しましょう とお伝えしています。 保障とは本来、もし自分に何かあった場合に、自分の貯蓄では足りない部分を補う為の備えとなります。 保障が足りなくて万が一の際、家族が困窮してしまう、医院経営が傾いてしまう事態は絶対に避けないといけないことですが、 保険に入りすぎて現役時代の大きな支出を工面できない、また将来の資産形成に資金を回せないことも、ご家族の為によくありません。 ようはバランスが大切なのです。どれくらいの保障をどれくらいの費用を掛けて備えるべきか? この適正値を数値化したものが「必要保障額」となります。 まずはご自身の必要保障はいくらなのか?知ることから正しい保障構築は始まります。
必要保障額の算出の仕方
必要保障額を知るために、まず正確なライフプラン(人生計画)を作成し、現役時代中の総支出額を算出する必要があります。 ライフプランの作成は保険の外交員やFPに依頼をすれば無料で作成してくれますが、 彼らが保険販売を目的としてライフプランの作成依頼を受けている背景を理解しないといけません。 必要保障額が多額であればあるほど、高額な保険を販売することができる為、 通常より必要保障を高く設定してライフプラン作成している外交員は多く存在していると聞きます。ライフプランの作成は中立の立場のプロに任せるか、上記の前提を理解してプランニングすることをお勧めします。 以上の前提をふまえて、必要保障額の算出の公式は以下のとおりとなります。 ①就業不能状態時に必要なお金-②その時に準備できているお金 1. ①就業不能状態時に必要なお金は ・入院費用(医療費、その他関連費用) ・家族の生活費用 ・住宅費用 ・医院の運転資金(人件費、ローンの支払い等) 住居費用については、賃貸はもちろん、持ち家であっても団体信用生命保険は適応外で毎月のローン返済は変わりませんので注意が必要です。 また事業主である開業医の方々特有のリスクとして医院の運転資金の工面があります。この部分がいくらほど必要なのか医院の規模や人員の数で必要な金額が大きく変わってきます。 2. ②そのときに準備できているお金は ・公的保障(健康保険 特に高額療養費制度、傷病手当金) ・貯蓄 公的保障の「障害年金制度」は、病気や怪我で働けなくなった時に支えてもらえる国の制度ですが、障害といえど、癌や脳卒中、心筋梗塞、ペースメーカー、大腿骨壊死などの人口関節、人口肛門、人工透析、糖尿業、リウマチ、うつ・・なども支給されるケースがあることは知っておくとよいでしょう。 就業不能リスクは短期(60日)と長期(1年以上~)「就業不能リスク」がありますが、本当にリスクが高いのは長期(1年以上~)の「就業不能リスク」です。 次は ではどのように賢く休業保障を備えるのか?考えていきましょう。
開業医がおさえるべき休業保障の備え方の3パターン
休業保障の備え方は大きく3つのパターンがあります。 大まかな特徴を掴み、自分にあった方法を選択しましょう。 また、一つの方法に固執する必要ななくそれぞれのパターンを組み合わせて必要な保障をプランニングするのもよいでしょう。
1)共済系
保険医協会、日本税理士共栄会など共済団体が会員向けに提供している休業保障制度となります。 共済とは営利団体ではなく元々、組合員同士の相互扶助を目的に設立された背景がありますので良心的な掛け金で大きな保障を備えることが可能です。 デメリットは年齢に準じて加入できる保障額が減額されていく点と保険料が年齢とともに上昇する点です。 高齢の方にはむしろ割高な手段となる為、開業間もなく年齢が比較的若いドクターが休業保障を準備する時にまず検討すべき方法でしょう。 また、1年前後の医院の休業を想定した保障と長期休業に対応した保障の2種類がある点も意外に見落とされがちです。 休業保障に加入した=一生涯保障してくれる というわけではないので注意が必要です。ご自身の休業保障の「期間」を改めて確かめてみましょう。
団体信用生命系
この方法は借入を起してマイホームや収益不動産を所有している方、または検討している方に限られますが、 団体生命保険(不動産ローンを組んだ際に加入する保険)を活用して休業保障を備える方法です。 近年では団体信用生命保険の保障の中に「8大疾病保障」「介護保障」など休業状態につながる重大疾病や介護を要する場合にも 保障が適用される商品も販売されています。 例えば、収益不動産の借入に介護保障付団信を付加しておけば、 万が一 院長先生が介護原因で休業状態になった場合、不動産の残債の返済義務がなくなり毎月の家賃収入をそのまま受け取ることができます。 不動産収入をもう一つの収入源、万が一の休業保障として活用する方法になります。 空室もなく家賃が入金さる限り保障の期間は続きますが、空室期間中は保障がなくなる空室リスクがデメリットとなります。
民間保険系
民間の保険会社が販売する 休業保障保険に加入する方法です。 近年、保険会社も死亡保障よりも働けなくなった場合のリスクを保障する商品開発に力をいれおり、よい商品も増えてきました。 死亡保障に休業保障(特定疾病や介護)を付加した併用タイプやネット生保の休業保障保険など商品のバリエーションも増えてきています。 加入者の細かなニーズに応えられる点が民間保険系の強みといえます、デメリットとしてはやはり保険料が高額な点です。 共済系の休業保障をベースにして不足分を補完する目的で加入を検討するとよいでしょう。 以上、おおまかに3つのカテゴリーで休業保障の備え方をご紹介してきました。 前項でお伝えした備え方の3つのポイントを軸に 自分にあった必要保障と予算のバランスを検討していきましょう。 本コラムがご自身の資産の把握の必要性と、先生の保障の最適化の一助となれば幸いです。